新型コロナ⑥

◆プライバシー管理の在り方

コロナ禍で、改めてプライバシーのあり方も議論されるべきでしょう。
自宅療養中の感染者の監視できず、迅速な経済支援実行のために支援対象の実情把握が必要なのに行政も本当に困っている人を把握できない。一方、コロナに感染した従業員の開示など不必要なほど神経質に迫るマスコミ、ネット世論は野放しになっている。このちぐはぐな状況を、コスト・ベネフィットを天秤にかけて判断する必要があるでしょう。
 
まず、必要な支援を迅速に行うために、行政が個人の実情を把握する必要性が浮き彫りになった点から、個人番号について考えます。本来、番号制度が不利に作用するのは、所得や資産を隠している者(不心得な自営業者や農家、課税逃れしている富裕層、犯罪収益金など)であり、一般人、特にサラリーマンに不利益は少ないはずです。また、最も福祉が必要とされる低所得者や困窮者が、自ら申告しなくても行政から必要な扶助を受けられる点では、個番号制に不利益よりも利益が圧倒的に大きいはずです。
 
紆余曲折を得て決定された国民に一律10万円支給する施策も、より効率的かつ効果的に実行きたはずです。
そもそも、一律10万円という金額自体が果たして有効なのでしょうか。本当に困窮している人には十分とは言えないでしょうし、収入が途絶えていない人には不要でしょう。
所得補償すべかの審査は手間も時間もかかるので、次善の策として実行されることになったのでしょうが、今後も教訓にすべき事例でしょう。
 
社会の公正やセーフティーネットを考慮すると、個人の収入(収入源)と資産の把握ができていれば、効率よく効果的に様々な政策を実行可能でしょう。役所や銀行での無駄で3蜜を強いられる窓口対応の付加も軽減されるでしょう。
なぜ、日本で個人番号制が十分機能していないのか。政治や行政の対応が後手になるなど、不平を言う前に、日本の番号制度を振り返ることは意義あることでしょう。個人番号の運用は既に半世紀前から必要性が認識されていながら、また機能する番号制度があれば回避できた事態を経験しながら今日に至っています。
 
<日本における番号制度の経緯>
・1960年代、コンピュータが行政分野に普及
・1970年に日本でも統一行政コードの研究会がスタート
・学識経験者がプライバシーを強調、行政事務のコンピュータ化に労組が反対、
イメージ先行で世論も反対し研究がとん挫
※一方で、既に年金記録の不正確さ、氏名のみでの本人特定の危険性が指摘されていた
・1980年度に非課税貯蓄(マル優)の仮名口座防止のための新制度を税法改正で導入も、
郵政・金融業界が反発、実施されず5年後に廃止
・2002年、住基ネット稼働も民間利用は禁止、あえて利便性に難ある設計に
・2007年、消えた年金問題発覚
・2008年、リーマンショックでの定額給付に所得制限設定できず
・2015年、マイナンバー交付開始
 
出所:『マイナンバー制度の本質と今後の展望』 榎並俊博、『マイナンバーについて考えてみた』 中村伊知哉
 
半世紀前から番号制の利用を模索しながらも、「管理社会」のイメージありきの感情論や、不正とまでは言えないまでも、資産に余裕のある人のさもしい動機で個人番号の活用が活用されずに今日至りました。そのなかで、消えた年金問題や、大不況時に助けが必要な人に助けを迅速に届けられない事態が生じてきました。
 
今日、金融機関など(銀行、証券会社、生命保険会社、損害保険会社、 先物取引業者、金地金販売会社など)でマイナンバーの申請が求められる機会には下記のようなケースがあります。
 
・株、投資信託、公社債などの証券取引
・非課税適用の預貯金・財形貯蓄
・国外送金/国外からの送金の受領
・生命保険契約・損害保険契約(一定額以上の保険金受取など)
先物取引(FX取引等)
・信託会社への信託
・1回200万円超の金地金の売却
・非上場株の配当を受け取る株主
 
しかし、2018年1月から預貯金口座への付番が開始されましたが番号の提供は任意です。

国が個人情報を管理することに感情論だけでなく、情報流出の懸念も耳にしますが、情報漏洩が絶対起きない「セロリスク」は現代の情報社会ではありえないことでしょう。流出を前提に対策をたてながら、ここでもコストとベネフィットを天秤にかけないと、結局私たち国民が損をするだけではないでしょうか。