新型コロナ⑤

◆安全保障の視点

各国の指導者がコロナ禍を“戦争”と表現していることが象徴していますが、感染症対策は安全保障の領域です。軍事組織が感染症の封じ込めの全てにおいて前面に出ることが前提ではなくても、封じ込めに安全保障の視点が有効です。

 

ダイヤモンド・プリンセス号での支援活動で自衛官の感染者はゼロでした。コロナ対策とともに、自衛隊がとった指針は私たちも学ぶべきことが多々あります。軍隊のように、明確な行動規範を持ち、その実践のために訓練し、本番では訓練の内容を忠実に実行するする、「1人1人が基本動作を忠実に、徹底的に、実施」の重要性がよくわかります。

 

新型コロナウイルス感染拡大を 受けた防衛省自衛隊の取組』

https://www.mod.go.jp/j/approach/exchange/area/euro/france/docs/20200417_j-fra_gaiyo-1jp.pdf

  

また、冗長性・余裕をもつことも必要です。コストを要しても医薬品やマスクなどの備蓄、有事の際に国が優先的に買い取る仕組みも必要でしょうし、人員、土地などスペースを確保しておくことも検討しなくてはならないでしょう。

 

政府の対応に疑問が呈されたダイヤモンド・プリンセス号での対応も、乗船者を速やかに隔離する施設がないことが船内での集団感染を加速させたのではないでしょうか。ホテルの借り上げなど代用可能な手段も必要ですが、大災害時の被災者収容にも利用可能な空いた土地や施設を維持するためのコスト負担も私たちは考えなくてはならないでしょう。

 

社会の安全を最優先するために、一人一人の協力が不可欠ですが、性善説で対策を考えることは危険どころか、滑稽でさえあります。武漢からのチャーター便の帰国者には経過観察期間を無視して帰宅した者もいました。善意に頼らず、必要な行動制限を設定し、違反者を処罰することも検討する時期でしょう。

 

今後も発生する可能性のある様々種類の有事に少しでも有効に対応するために、平時ではコストや負担にすぎないものを許容し、手順通りに進める準備を整え、有事ゆえに許されない行動と従うべき規則を決めておくことが求められます。いざ有事になれば必ずしも想定通りに進まないでしょうが、事前の準備があれば少しでも効果的に、多少なりとも不安も鎮めながら事態に対処できるでしょうから。